本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。企業を調べ・整理し・記録する探索ログです。
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サマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Advanced Micro Devices, Inc. |
| ティッカー | AMD |
| 上場市場 | NASDAQ |
| 業種 | 半導体(CPU・GPU・FPGA) |
| 株価(調査時点) | 約$512(2026-06-17) |
| 時価総額 | 約$8,456億(約8,456B) |
| PER(GAAP) | 約193倍 |
| PER(non-GAAP) | 約123倍 |
| EPS(GAAP・2025通期) | $2.65 |
AMDはCPU、GPU、FPGA(回路を書き換えられる半導体)を設計するファブレス半導体企業。自社で工場を持たず、設計に集中して製造はTSMCなどに委託するモデルをとっている。AIデータセンターでは、サーバー用CPUの「EPYC」とAI計算用GPUの「Instinct」を組み合わせ、NVIDIAに次ぐ第2の供給元として存在感を高めている。
2025年通期の売上高は346.39億ドル。そのうちData Center(データセンター向け)セグメントが166.35億ドルで全体の約48%を占め、2026年Q1にはさらに56%まで拡大した。PC・ゲーム機向けの会社から、AIデータセンター向けの会社へと主役が入れ替わりつつある。
出典:株価はInvestors.com報道(2026-06-17終値)、業績はAMD FY2025決算リリース、バリュエーションは株価$512.48と公式財務から計算。
なぜ調べたか
NVIDIAの企業分析ログを書いたとき、競合として何度もAMDの名前が出てきた。NVIDIAが圧倒的なシェアを持つAI GPU市場で、「第2の選択肢」としてAMDがどの程度の売上・利益を出しているのか、公式の数字で確認する必要があると感じた。
また、カスタムASIC解説記事で書いたように、クラウド各社が自前のAI半導体を作り始めるなかで、AMDが「汎用GPU」と「サーバーCPU」の両方を持つ唯一の企業として、どこにポジションを取ろうとしているかを整理しておきたい。
基本情報
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 設立 | 1969年 | AMD公式 |
| 本社 | カリフォルニア州サンタクララ | AMD公式 |
| CEO | Lisa Su(会長兼CEO) | AMD公式 |
| 上場 | NASDAQ: AMD | — |
| ビジネスモデル | ファブレス(設計専業、製造はTSMC等に委託) | AMD公式 |
事業構造
AMDが作っているもの
AMDの製品は、大きく5種類に分かれる。
| 部品 | AMDの製品名 | AIデータセンターでの役割 |
|---|---|---|
| CPU(中央処理装置) | EPYC | サーバー全体の司令塔。OS、ネットワーク、データの前処理、推論の一部を担う |
| GPU(画像処理装置→AI計算) | Instinct | AIの学習・推論で大量の行列計算を並列処理する |
| DPU/NIC(通信処理チップ) | Pensando、Pollara | ネットワークやセキュリティの処理をCPUから引き受ける |
| FPGA(書き換え可能な半導体) | Versal、Alveo | 通信インフラ、エッジAI(端末に近い場所でのAI処理)、特定処理の高速化 |
| ソフトウェア基盤 | ROCm | NVIDIAの「CUDA」に対抗するGPU向け開発環境 |
出典:AMD公式製品ページ

セグメント構成(報告区分)
AMDの決算報告は3つのセグメントに分かれている。
| セグメント | 主な中身 | 初心者向けの説明 |
|---|---|---|
| Data Center | EPYC CPU、Instinct GPU、DPU、FPGA | AIクラウド・サーバー向け。現在の成長の柱 |
| Client and Gaming | Ryzen CPU、Radeon GPU、ゲーム機向けSoC | パソコンとゲーム機向け |
| Embedded | 組込みCPU、FPGA、Adaptive SoC | 産業機器、通信、車載、航空宇宙向け |
2025年通期のセグメント別業績
| セグメント | 売上高 | 全社比率 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| Data Center | 166.35億ドル | 約48% | 36.03億ドル | 約22% |
| Client and Gaming | 145.50億ドル | 約42% | 28.55億ドル | 約20% |
| Embedded | 34.54億ドル | 約10% | 12.43億ドル | 約36% |
| All Other(買収関連費用等) | — | — | -40.07億ドル | — |
| 合計 | 346.39億ドル | 100% | 36.94億ドル | 約11% |
出典:AMD FY2025決算リリース。All Otherには2022年のXilinx買収に伴う無形資産の償却費(非現金の会計コスト)や株式報酬が含まれる。これがGAAP営業利益率を約11%に押し下げている。
直近4四半期の推移
| 四半期 | 売上高 | Data Center | Client and Gaming | Embedded | 営業利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025 Q2 | 76.85億ドル | 32.40億ドル | 36.21億ドル | 8.24億ドル | -1.34億ドル |
| 2025 Q3 | 92.46億ドル | 43.41億ドル | 40.48億ドル | 8.57億ドル | 12.70億ドル |
| 2025 Q4 | 102.70億ドル | 53.80億ドル | 39.40億ドル | 9.50億ドル | 17.52億ドル |
| 2026 Q1 | 102.53億ドル | 57.75億ドル | 36.05億ドル | 8.73億ドル | 14.76億ドル |
出典:AMD Q1 2026決算、AMD FY2025/Q4決算、AMD Q3 2025決算
注意:2025年Q2の営業赤字は、米国の対中輸出規制に関連してInstinct MI308の在庫評価損など約8億ドルを計上したことが主因。
サーバーCPU「EPYC」:Intelからシェアを奪っている
AIデータセンターで注目されるのはGPUだが、サーバーはGPUだけでは動かない。OS(基本ソフト)の管理、ネットワーク通信、データの前処理、ストレージへの読み書き、推論の実行管理など、GPUの「脇を固める」仕事はすべてCPUが担う。GPU 8枚のサーバーでもCPUは必要で、AIが普及するほどサーバーCPUの需要も増える。
AMDの「EPYC」は、長年Intelが支配してきたサーバー向けx86 CPU市場でシェアを拡大し続けている。
サーバーCPU市場シェアの推移
| 時期 | AMD台数シェア | AMD売上シェア |
|---|---|---|
| 2025年Q4 | 28.8% | 41.3% |
| 2026年Q1 | 33.2% | 46.2% |
出典:調査会社Mercury Research推計、Tom’s Hardware報道(2026年Q1)。AMD公式の数字ではなく、第三者の市場推計である点に注意。
台数シェアより売上シェアが大きいのは、AMDが高価格帯のサーバーCPU(EPYCの上位モデル)を多く出荷していることを示している。
EPYCの強み
現行のEPYC 9005(コードネーム:Turin)は、最大192コアで、メモリチャネル数やPCIe接続数でIntel Xeon 6と差別化している。AIサーバーでGPUを多数接続する際、CPUのI/O(入出力)能力が重要になるため、GPUサーバーのホストCPUとしてEPYCが選ばれるケースが増えている。
出典:AMD EPYC公式
ただし、AWSのGraviton、MicrosoftのCobalt、NVIDIAのGraceなど、Arm系アーキテクチャ(x86とは異なる設計思想のCPU)のサーバーCPUも台頭しており、EPYCの市場が一方的に拡大し続ける保証はない。
AI GPU「Instinct」:NVIDIAの代替ではなく「第2の選択肢」
主要製品の比較
| 製品 | 世代 | HBM容量 | メモリ帯域 | AI演算性能 | 消費電力 |
|---|---|---|---|---|---|
| MI300X | CDNA 3 | 192GB HBM3 | 約5.3TB/秒 | BF16 1.3PFLOPS | 750W |
| MI325X | CDNA 3 | 256GB HBM3E | 約6TB/秒 | BF16 1.3PFLOPS | 1,000W |
| MI355X | CDNA 4 | 288GB HBM3E | 8TB/秒 | BF16 2.5PFLOPS | 1,400W |
| MI450/MI455X | 次世代 | HBM4世代 | 未確定 | 未確定 | 未確定 |
出典:MI300X公式、MI325X公式、MI355X公式。MI450/MI455Xは2026年6月時点でロードマップ段階、最終仕様は未確定。
用語の補足:HBM(High Bandwidth Memory)はGPUのすぐ横に積み重ねて実装する超広帯域メモリで、AI計算で大量のデータを高速に読み書きするために不可欠。HBM3→HBM3Eと世代が進むほど容量と速度が上がる。PFLOPS(ペタフロップス)は1秒間に1,000兆回の浮動小数点演算ができる性能の単位。BF16(bfloat16)はAI学習・推論でよく使われる16ビットの数値形式。
NVIDIAとの違い
| 比較軸 | NVIDIA(H100/H200/B200) | AMD(MI300X/MI325X/MI355X) |
|---|---|---|
| 強み | CUDA(開発環境)の圧倒的な普及、NVLink(GPU間の高速通信)、供給規模 | HBMの大容量、価格交渉力、NVIDIA一社依存を避けたい顧客の受け皿 |
| 弱み | 高価格、供給不足が起きやすい | CUDAと互換性がなく移行コストがかかる、実運用事例がまだ少ない |
| 顧客の使い方 | AI学習・推論の主力 | NVIDIAに加えた第2の供給元、大容量メモリが必要な用途 |
AMDのInstinctを「NVIDIAの代わり」と見るのは危険。NVIDIAのCUDAは10年以上かけて築いた開発者エコシステムで、すぐに置き換わるものではない。AMDの投資論点は、「NVIDIAに勝つ」ことではなく、「AIインフラ投資が大きくなりすぎた結果、顧客が第2の供給元と価格交渉力を求めるようになった」ことにある。
主な採用事例
| 顧客 | 内容 |
|---|---|
| OpenAI | AMDを優先パートナーとし、6GW規模のAMD GPU展開を発表。最初の1GWはMI450で2026年後半開始予定 |
| Meta | 最大6GWのInstinct GPU展開計画。最初の1GWはカスタムMI450ベースGPU |
| Oracle | OCIがAMD Heliosラック設計のAIスーパークラスターを提供予定。50,000 GPU初期展開 |
| Microsoft Azure | EPYC搭載インスタンスおよびInstinct採用 |
| AWS | 第5世代EPYC搭載インスタンスを提供 |
出典:AMD Q1 2026決算リリース、AMD Q1 2026 10-Q、AMD Q3 2025決算リリース
OpenAIとMetaの案件には注意点がある。AMDは両社に対して条件達成型のワラント(株式引受権)を各1.6億株、行使価格0.01ドルで発行している(10-Qで開示)。一定の購入条件を満たすと株式に転換され、既存株主の持分が薄まる可能性がある。

ROCm:CUDAの壁は超えられるか
ROCmは、AMD GPU上でAI・HPC(高性能計算)のプログラムを動かすためのオープンソースのソフトウェア基盤。NVIDIAのCUDAに相当するもので、PyTorch、TensorFlow、JAXなどの主要AIフレームワーク(学習・推論を実行するソフトウェア)に対応している。
| 観点 | 状況 |
|---|---|
| 強み | オープンソース、主要AIフレームワーク対応、vLLM・SGLangなどの推論フレームワーク対応が拡大中 |
| 弱み | CUDAの方が圧倒的にユーザー・ライブラリ・運用ノウハウが多い |
| 投資家としての見方 | ROCmが改善しなければAMDのGPUは売れない。ハードだけでは勝てない |
出典:ROCm公式ドキュメント
DPU・FPGA:GPUだけの会社ではない
DPU/NIC(Pensando由来)
AMDは2022年にPensandoを買収し、DPU(Data Processing Unit:ネットワークやセキュリティの処理を専門に行うチップ)を手に入れた。AIデータセンターでは、GPU間の高速通信、ストレージアクセス、セキュリティ、マルチテナント管理(複数の顧客が同じサーバーを共用する仕組み)が重要で、これらの処理をCPUから切り離すDPUの需要が増えている。
NVIDIAはBlueFieldという同等製品を持ち、GPU・ネットワーク・ソフトウェアを一体で提供する戦略が強い。AMDがPensandoやPollara(AI向けネットワークチップ)でどこまで対抗できるかが長期的な論点になる。
FPGA/Adaptive SoC(Xilinx由来)
2022年にXilinx(ザイリンクス)を約500億ドルで買収し、FPGA(Field Programmable Gate Array:製造後も回路を書き換えられる半導体)事業を取得した。通信インフラ、産業機器、車載、エッジAI向けで、Embeddedセグメントの収益の柱。
Embeddedセグメントは2025年通期で売上34.54億ドル・営業利益率約36%と、利益率は3セグメント中で最も高い。一方で売上は前年比-3%と、産業・通信分野の在庫調整の影響を受けやすい。
財務分析
5年業績推移
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 164.34億ドル | 36.48億ドル | 31.62億ドル | $2.57 | 約48% |
| 2022 | 236.01億ドル | 12.64億ドル | 13.20億ドル | $0.84 | 約45% |
| 2023 | 226.80億ドル | 4.01億ドル | 8.54億ドル | $0.53 | 約46% |
| 2024 | 257.85億ドル | 19.00億ドル | 16.41億ドル | $1.00 | 約49% |
| 2025 | 346.39億ドル | 36.94億ドル | 43.35億ドル | $2.65 | 約50% |
出典:AMD FY2025決算リリース、過年度は10-Kより。
2022〜2023年の営業利益急減は、Xilinx買収に伴う無形資産償却費が加わったことと、PC・ゲーム市場の在庫調整が重なったため。2024年以降はAIデータセンター需要で回復し、2025年は過去最高の売上と利益を記録した。

2026年Q1の業績
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 102.53億ドル |
| GAAP粗利率 | 53% |
| 営業利益 | 14.76億ドル |
| 純利益 | 13.83億ドル |
| 希薄化EPS | $0.84 |
2026年Q2のガイダンス(会社側の業績見通し)は売上高112億ドル±3億ドル、non-GAAP粗利率(一時費用を除いた粗利率)約56%。
キャッシュフロー
| 期間 | 営業CF | 設備投資 | FCF(フリーキャッシュフロー) | FCFマージン |
|---|---|---|---|---|
| 2024年通期 | 30.41億ドル | 6.36億ドル | 24.05億ドル | 約9% |
| 2025年通期 | 64.93億ドル | 9.74億ドル | 55.19億ドル | 約16% |
| 2026年Q1 | 29.55億ドル | 3.89億ドル | 25.66億ドル | 25% |
FCF(Free Cash Flow)は、本業で稼いだ現金から設備投資を引いた「自由に使えるお金」。AMDはファブレスなので工場への巨額投資はないが、AIが拡大するにつれてウェハ(半導体の材料となるシリコンの円盤)確保やパッケージング費用が増え、運転資金の負担は大きくなりつつある。
出典:AMD FY2025決算リリース、AMD Q1 2026決算リリース
バランスシート(2026年Q1末)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 現金・短期投資合計 | 123.47億ドル |
| 棚卸資産 | 80.45億ドル |
| のれん(Goodwill) | 253.44億ドル |
| 買収関連無形資産 | 161.54億ドル |
| 総資産 | 796.42億ドル |
| 有利子負債 | 32.24億ドル |
| 株主資本 | 644.62億ドル |
のれんと買収関連無形資産が合計約415億ドルと総資産の半分以上を占める。これはXilinx買収の名残で、毎期の償却費がGAAP利益を押し下げる要因。AMDをNVIDIAとPERで比較する際は、GAAP(会計基準通りの利益)とnon-GAAP(買収関連費用を除いた利益)のどちらで見るかで倍率が大きく変わる点に注意。
株主還元
配当は支払っていない。株主還元は自社株買いのみ。2026年Q1に2.21億ドルの自社株買いを実施し、残りの買戻し枠は92億ドル。
バリュエーション
以下は2026年6月17日の株価$512.48と公式財務データから計算した概算値。株価が動けば倍率は大きく変わる。
| 指標 | 概算値 | 計算の前提 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 約8,456億ドル | 株価$512.48 × 希薄化株式数16.50億株 |
| PER(GAAP) | 約193倍 | 株価 ÷ 2025年GAAP EPS $2.65 |
| PER(non-GAAP) | 約123倍 | 株価 ÷ 2025年non-GAAP EPS $4.17 |
| PBR(株価純資産倍率) | 約13.1倍 | 時価総額 ÷ 株主資本644.62億ドル |
| PSR(株価売上高倍率) | 約24.4倍 | 時価総額 ÷ 2025年売上346.39億ドル |
出典:株価はInvestors.com報道、財務はAMD FY2025決算リリース、AMD Q1 2026決算リリース。AMDは2026年6月中旬に一時時価総額9,000億ドル近辺と報じられている(MarketWatch報道)。
競合比較
| 企業 | ポジション | 投資家としての見方 |
|---|---|---|
| NVIDIA | AI GPU市場の圧倒的首位。CUDAエコシステムが参入障壁 | AMDの主戦場の相手。「追い抜く」ではなく「併存」がシナリオ |
| Intel | x86サーバーCPUの既存王者。AIアクセラレーターのGaudiは存在感が限定的 | EPYCとのCPU市場争いが直接的 |
| Broadcom | カスタムASIC(Google TPU等の設計支援)、ネットワーク | AMDのGPUと競合するよりも、ASIC vs GPUの構図 |
| Marvell | カスタムシリコン、光DSP、データセンター接続チップ | AMDと直接は競合しにくいが、AI半導体の多極化の一角 |
AMDをNVIDIAと単純にPERで比較するのは難しい。NVIDIAの方が利益水準が桁違いに高く、PERの分母が大きく異なるため。AMDの評価は「NVIDIAを追い抜くか」ではなく、「Data Centerセグメントの成長がどこまで続くか」に焦点を当てた方が見通しやすい。

市場が注目している点
MI350/MI355Xの出荷開始
2026年後半にCDNA 4世代のMI355Xの量産出荷が始まる見通し。MI300X/MI325XからHBM容量・演算性能が大幅に向上し、NVIDIAのBlackwell世代にどこまで迫れるかが注目されている。
OpenAI・Metaとの大型契約
OpenAI向け6GW、Meta向け最大6GWの大型GPU展開計画は、AMDのInstinct事業にとって過去にない規模。ただしワラント(株式引受権)の条件達成型発行を伴うため、売上増と株式希薄化のバランスを見る必要がある。
Data Centerセグメントの成長持続性
2026年Q1のData Center売上57.75億ドル(前年同期比+57%)がどこまで加速するか。EPYC CPUの市場シェア拡大とInstinct GPUの採用拡大が両輪で進むかどうかが、AMDの企業価値の前提になっている。
リスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| CUDAエコシステムの壁 | NVIDIAのCUDAは10年以上の蓄積がある。ROCmへの移行には開発者の学習コストと検証コストがかかり、すぐには進まない |
| NVIDIAの世代競争 | NVIDIAがBlackwell→Rubinと世代を更新するたびに、AMDは追いつきを迫られる |
| Arm系サーバーCPU | AWS Graviton、Microsoft Cobalt、NVIDIA Graceなどが、EPYCのx86市場を一部侵食する可能性 |
| TSMC・HBM供給の制約 | AMDはファブレスのためTSMCの先端製造能力に依存。需要があっても製造枠を確保できなければ売上にならない |
| 対中輸出規制 | 2025年Q2にMI308関連で約8億ドルの損失を計上した前例。規制変更が在庫評価や販売計画に影響する |
| ワラント希薄化 | OpenAI・Meta向けワラント(各1.6億株、行使価格0.01ドル)が条件達成で転換されると、既存株主の持分が薄まる |
| Embedded低迷 | 産業・通信・組込みの在庫調整が長引くと、Xilinx由来のEmbedded事業が回復しにくい |
| 顧客集中 | AI GPU事業は少数の大口顧客(ハイパースケーラー)の発注計画に依存しやすい |
日本株との接続
AMDのAIデータセンター向けCPU・GPUが増えると、日本企業にも波及する。ただし日本株への影響は「AMD単独」ではなく、NVIDIA、Broadcom、クラウド各社のカスタムASIC、TSMC、HBMメーカーを含むAIインフラ投資全体で見る必要がある。
| 分野 | 日本企業の例 | つながり方 |
|---|---|---|
| テスタ(検査装置) | アドバンテスト(6857) | GPU、CPU、HBM周辺チップの検査需要 |
| IC基板 | イビデン(4062) | 高性能CPU・GPUのパッケージ基板 |
| 光通信 | フジクラ(5803)、古河電工(5801) | AIデータセンターの高速光配線 |
| 電源 | 富士電機(6504) | GPUサーバー、ラック電源、電力変換 |
| 冷却・水処理 | 荏原(6361)、栗田工業(6370) | 液冷システム、超純水供給 |
| 電子部品 | 村田製作所(6981)、太陽誘電(6976) | MLCC(積層セラミックコンデンサ)、インダクタ |
次に確認すべきこと
- 2026年Q2決算(2026年7〜8月予定):ガイダンスの売上112億ドル±3億ドルを達成できるか。Data Centerセグメントの成長率を確認
- MI355Xの出荷開始状況:2026年後半の量産出荷がスケジュール通りか
- OpenAI・Meta向けGPU展開の進捗:1GW規模のMI450展開が実際に始まるか
- EPYC市場シェア:Mercury Research推計の次回更新で、x86サーバーCPU市場でのAMDシェアが50%に近づくか
- 対中輸出規制の変更:新たな規制対象製品の追加や、既存規制の緩和がないか
まとめ
AMDは、NVIDIAが圧倒するAI GPU市場で「第2の選択肢」としてのポジションを確立しつつある。Data Centerセグメントの売上は2025年通期で166.35億ドル、2026年Q1だけで57.75億ドルに達し、全社売上の過半数を占めるまでになった。EPYCのサーバーCPU市場シェア拡大とInstinctのAI GPU採用拡大が同時に進んでいる。
ただし、PER 193倍(GAAP)という水準は、「Data Center事業の高成長が続く」ことを強く織り込んでいる。NVIDIAのCUDAに対するROCmの弱さ、TSMC製造枠の制約、対中規制リスク、ワラント希薄化など、成長を阻むシナリオは複数ある。AMDを見るときの問いは「NVIDIAに勝てるか」ではなく、「AIインフラ投資の拡大が続く限り、第2極の需要は増え続けるか」である。
関連する企業分析ログ
- NVIDIA(NVDA)企業分析ログ — AI GPU市場の最大手。AMDの主要競合
- マイクロン・テクノロジー(MU)企業分析ログ — AMDのGPUに搭載されるHBMの供給元のひとつ
- カスタムASIC解説 — AMDのGPUと「用途特化型の自社設計チップ」との棲み分け
- メモリ業界×AI需要の構造分析 — HBMを中心としたメモリ業界全体の動向
- CPU・GPU・ASICの違い解説 — CPU・GPU・ASICの基本的な違いと役割
参考情報
公式IR・決算
- AMD Investor Relations:https://ir.amd.com/
- AMD Q1 2026 Financial Results:https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1284/amd-reports-first-quarter-2026-financial-results
- AMD FY2025/Q4 2025 Financial Results:https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1276/amd-reports-fourth-quarter-and-full-year-2025-financial-results
- AMD Q3 2025 Financial Results:https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1265/amd-reports-third-quarter-2025-financial-results
- AMD SEC Filings:https://ir.amd.com/financial-information/sec-filings
公式製品ページ
- AMD EPYC Server CPUs:https://www.amd.com/en/products/processors/server/epyc.html
- AMD Instinct MI355X:https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi350/mi355x.html
- AMD Instinct MI325X:https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi300/mi325x.html
- AMD Instinct MI300X:https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi300/mi300x.html
- AMD ROCm Documentation:https://rocm.docs.amd.com/en/latest/
報道・調査会社
- Tom’s Hardware(Mercury Research x86シェア・Q1 2026):https://www.tomshardware.com/pc-components/cpus/amd-reaches-46-percent-of-server-x86-cpu-revenue-intel-still-controls-70-percent-of-the-consumer-pc-market-share
- Tom’s Hardware(Mercury Research x86シェア・Q4 2025):https://www.tomshardware.com/pc-components/cpus/30-percent-of-x86-cpus-sold-are-now-made-by-amd-as-companys-market-share-grows-thanks-to-a-flagging-intel-enjoys-growth-across-all-segments-as-competition-intensifies
- Investors.com(AMD株価・2026-06-17):https://www.investors.com/news/technology/chip-stocks-amd-arm-intel-price-target-hikes/
- MarketWatch(AMD時価総額$900B近辺報道):https://www.marketwatch.com/story/amd-flirts-with-a-900-billion-valuation-after-beefing-up-its-memory-technology-2a366bdc
免責事項
本記事は企業分析および市場理解を目的とした情報整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。



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