本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。企業を調べ・整理し・記録する探索ログです。
📍 この企業はAIデータセンター銘柄マップの「光通信・電力インフラ」レイヤーに位置しています → AIデータセンター関連株マップ
サマリー

- 銘柄: 古河電気工業(5801・東証プライム)
- 時価総額: 2兆9,743億円(2026年6月12日時点)(出典:IRBANK 古河電気工業 決算まとめ、2026-06-12時点)
- PER / PBR: 36.11倍 / 7.10倍(出典:IRBANK 古河電気工業 決算まとめ、2026-06-12時点)
- 2026/3実績 OPM: 4.88%(前年比+0.96pt)
- 2027/3会社予想 OPM: 6.51%(+1.63pt改善見込み)
- 注目テーマ: 光配線・電力供給・放熱冷却──AIデータセンターに必要な3領域を自前で持つ「総合部材メーカー」
- ポイント: フジクラほどの高収益ではないが、OPM 1%台→6%台への急改善が進行中。光だけでなく電力ケーブル・ヒートパイプまでカバーする幅広さが差別化要因
なぜ調べたか
AIデータセンター関連銘柄として、光配線のフジクラ(5803)が市場で大きく注目されている。フジクラのOPMは15%超と高水準だが、PERは50倍を超え、すでに多くの成長期待が株価に織り込まれた印象がある。
そこで「フジクラの次」として浮上するのが古河電気工業だ。光ファイバー・光コネクタでフジクラと直接競合しながら、電力ケーブルや放熱部材まで手がける。OPMは1%台から急改善中で、利益率の変化率だけ見れば最もダイナミックな局面にある。
「光だけのフジクラ」と「光+電力+冷却の古河電工」──この構図を数字で検証するために調べた。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | 古河電気工業株式会社 |
| 証券コード | 5801(東証プライム) |
| 創業 / 設立 | 1884年 / 1896年 |
| 本社 | 東京都千代田区 |
| 従業員数 | 49,112名(連結)(出典:古河電工公式 Company Profile、2026-06-17取得) |
| 主要株主 | 日本マスタートラスト信託銀行 17.41%、日本カストディ銀行 6.76%(出典:株探 古河電気工業 大株主、2026-06-17取得) |
| 主要事業 | 光ソリューション、光デバイス、電力ケーブル、放熱・冷却部材、半導体関連材料 |
| 時価総額 | 2兆9,743億円(2026年6月12日時点)(出典:IRBANK 古河電気工業 決算まとめ、2026-06-12時点) |
事業構造

古河電工は4つのセグメントで事業を展開している。売上高の6割を占める電装エレクトロニクスが主力だが、利益率の面では機能製品セグメントが最も高い。
セグメント別業績(2025/3期)
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | OPM |
|---|---|---|---|---|
| 電装エレクトロニクス | 7,277億円 | 60.6% | 323億円 | 4.4% |
| 機能製品 | 1,409億円 | 11.7% | 140億円 | 9.9% |
| インフラ | 3,045億円 | 25.3% | 45.3億円 | 1.5% |
| サービス・開発等 | 286億円 | 2.4% | △36.3億円 | — |
(出典:IRBANK 古河電気工業 セグメント、2025/3期、2026-06-17取得)
電装エレクトロニクスは、自動車用ワイヤーハーネス・光ファイバー・光接続製品が中心。AIデータセンター向け光配線はここに含まれ、今後の成長ドライバーとなる。
機能製品は、ヒートパイプやヒートシンクなどの放熱部材、半導体向けバックグラインドテープなどを扱う。OPM 9.9%と最も高収益で、AIサーバーの冷却需要拡大の恩恵を直接受ける。
インフラは、電力ケーブルが中心。OPMは1.5%と低いが、データセンターへの大電力供給で需要拡大が期待される。
財務分析

5年間の業績推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS(円) | OPM |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/3 | 9,305億円 | 114億円 | 101億円 | 143.38 | 1.23% |
| 2023/3 | 1兆663億円 | 154億円 | 159億円 | 225.79 | 1.45% |
| 2024/3 | 1兆565億円 | 112億円 | 65.1億円 | 92.39 | 1.06% |
| 2025/3 | 1兆2,017億円 | 471億円 | 334億円 | 473.48 | 3.92% |
| 2026/3 | 1兆3,075億円 | 639億円 | 725億円 | 1,030.16 | 4.88% |
| 2027/3予想 | 1兆4,600億円 | 950億円 | 820億円 | 1,165.60 | 6.51% |
(出典:IRBANK 古河電気工業 決算まとめ、2026-06-17取得)
読み取れるポイント
- OPMの急改善: 2024/3の1.06%を底に、2年で4.88%まで回復。2027/3には6.51%へ到達する見込み。電線メーカーとしては異例のスピードで利益率が改善している
- EPSの急拡大: 2024/3の92円→2026/3の1,030円→2027/3予想1,166円。利益の伸びが売上以上に大きい
- 純利益の特殊要因: 2026/3期は純利益725億円と営業利益639億円を上回っている。特別利益(政策保有株式の売却益など)が寄与したと考えられ、この水準の持続性には注意
BS・CF(2026/3期)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総資産 | 1兆663億円 |
| 自己資本比率 | 39.1% |
| 有利子負債 | 3,167億円 |
| 現金及び預金 | 705億円 |
| ネットD/Eレシオ | 約0.59倍 |
| 営業CF | 281億円 |
| フリーCF | △190億円 |
(出典:IRBANK 古河電気工業 決算まとめ、2026-06-17取得)
フリーCFがマイナスである点は気になる。成長投資(光ファイバー増産・データセンター向け設備)に資金を振り向けている段階と見れるが、営業CFに対して設備投資が大きく、財務の余裕度はフジクラや住友電工に比べて見劣りする。
AIデータセンターとの接点

古河電工の最大の特徴は、AIデータセンターに必要な部材を「光・電力・冷却」の3領域にわたって持っていることだ(出典:古河電工公式 データセンターソリューション、2026-06-17取得)。
光配線(データ伝送)
| 製品 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 超多心Rollable Ribbon光ケーブル | ラック間・棟間配線 | 高密度実装で施工性を大幅改善 |
| 融着接続機 | 光ファイバー接続 | 現場施工の高速化 |
| 多心コネクタ | サーバー間接続 | 低損失・高密度 |
光デバイス(信号処理)
| 製品 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| DFBレーザー | 光トランシーバー光源 | 高速伝送対応 |
| NanoITLA | コヒーレント光通信 | 小型・低消費電力 |
電力供給
| 製品 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 電力ケーブル | DC受電・配電 | 大容量送電対応 |
| 高電流接続用コネクタ | 電源系統接続 | 高信頼性 |
放熱・冷却
| 製品 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| ヒートパイプ | GPU・CPUの熱輸送 | 高い熱輸送能力 |
| ヒートシンク | サーバー放熱 | カスタム設計対応 |
| 熱伝導シート | 発熱部品と筐体の熱接続 | 高熱伝導率 |
半導体関連
| 製品 | 用途 |
|---|---|
| バックグラインドテープ | ウェハ研磨時の保護 |
(出典:古河電工公式 データセンターソリューション、2026-06-17取得)

フジクラが「光配線の一点突破」で高収益を実現しているのに対し、古河電工は「光+電力+冷却+半導体材料」を広くカバーする。この「幅の広さ」がクロスセルの余地を生む一方、各領域の利益率はフジクラの光配線ほど高くない。
競合比較

| 指標 | 古河電工(5801) | フジクラ(5803) | 住友電工(5802) | SWCC(5805) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,075億円 | 1兆1,823億円 | 5兆1,101億円 | 2,777億円 |
| OPM | 4.88% | 15.96% | 8.18% | 9.84% |
| PER | 36.11倍 | 50.29倍 | 26.74倍 | 22.00倍 |
| PBR | 7.10倍 | 14.00倍 | 3.12倍 | 4.14倍 |
(出典:各社IRBANK決算まとめ、2026-06-17取得。古河電工・住友電工は2026-06-12時点、フジクラ・SWCCは2026-06-16時点)
比較から読み取れること
- OPMの格差: フジクラの15.96%に対し古河電工は4.88%。約3倍の差がある。ただし古河電工のOPM改善ペースは最も速い(前年比+0.96pt)
- PERの位置づけ: フジクラ50倍>古河電工36倍>住友電工27倍>SWCC 22倍。古河電工は「フジクラほど高くないが、住友電工よりは成長期待が織り込まれている」中間ポジション
- 規模の違い: 住友電工は売上5兆円超の巨大企業で、データセンター比率は相対的に小さい。SWCCは電力ケーブル特化で規模が異なる
成長ドライバー

1. AIデータセンター建設の加速
世界的なAI投資拡大に伴い、ハイパースケーラー各社のデータセンター建設が加速している。古河電工は光配線だけでなく、電力ケーブルや冷却部材もワンストップで供給できる。「総合部材メーカー」としてのクロスセルが効けば、単価×数量の両面で成長余地がある。
2. OPMの構造的改善
OPM 1%台→6%台への改善は、低採算事業の整理とミックス改善(データセンター向け高付加価値品の比率上昇)が効いている。機能製品セグメント(OPM 9.9%)の構成比が上がれば、全社OPMはさらに改善する。
3. 光デバイスの内製優位
DFBレーザーやNanoITLAなど、光アクティブデバイスを内製している点は差別化要因。光ケーブル+光デバイスの一貫供給はフジクラにはない強みとなり得る。
成長条件と崩れる条件
成長シナリオが実現する条件
- AIデータセンター投資が2027年以降も高水準を維持する
- Rollable Ribbon光ケーブルのシェアが拡大し、光配線セグメントのOPMが上昇する
- 放熱・冷却部材がGPUサーバーの発熱増大トレンドに乗って高成長する
- 低採算事業の整理・撤退が計画通り進む
成長シナリオが崩れる条件
- AI投資の一巡・減速により、データセンター建設計画が後ろ倒しになる
- フジクラや住友電工との光配線の競争激化で価格下落が進む
- 自動車用ワイヤーハーネス(電装エレクトロニクスの主力)の需要減退
- フリーCFのマイナスが続き、財務体質が悪化する
シナリオ分析

強気シナリオ(OPM 8%達成)
- AI DC投資の高成長が継続し、光配線+放熱部材が同時に拡大
- 2028/3にOPM 8%を達成し、営業利益1,300億円規模に
- EPSは1,500円超となり、PER 30倍で株価45,000円水準
基本シナリオ(会社計画達成)
- 2027/3にOPM 6.51%、営業利益950億円を達成
- 利益改善は続くが、フジクラとのOPM格差は大きく縮まらない
- EPSは1,166円、PER 35倍前提で株価40,000円水準
弱気シナリオ(AI投資減速)
- データセンター投資が想定を下回り、光配線の成長が鈍化
- 自動車向けも弱含み、OPMが4%台で停滞
- EPSは800円台、PER 25倍に収縮し株価20,000円水準
会社予想(2027/3期)
| 項目 | 2026/3実績 | 2027/3会社予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,075億円 | 1兆4,600億円 | +11.7% |
| 営業利益 | 639億円 | 950億円 | +48.7% |
| 純利益 | 725億円 | 820億円 | +13.1% |
| EPS | 1,030.16円 | 1,165.60円 | +13.1% |
| OPM | 4.88% | 6.51% | +1.63pt |
営業利益が約5割増の予想。OPM 6.51%は電線メーカーとしてはかなりの水準だが、フジクラの15%超には遠い。純利益の伸びが営業利益ほどでないのは、2026/3期の特別利益の反動と考えられる。
バリュエーション

| 指標 | 数値 | コメント |
|---|---|---|
| PER(実績) | 36.11倍(出典:IRBANK、2026-06-12時点) | フジクラ50倍と住友電工27倍の中間 |
| PBR | 7.10倍(出典:IRBANK、2026-06-12時点) | 電線セクターとしては高水準 |
| PER(予想EPS基準) | 約32倍 | 2027/3予想EPS 1,166円で計算 |
| EV/EBITDA | ― | 要別途確認 |
評価の整理
- PER 36倍は「成長期待はあるが、フジクラほどではない」という市場の見方を反映
- PBR 7.10倍は純資産に対して高い。利益率がさらに改善しROEが上昇すれば正当化されるが、OPM改善が止まれば割高に映る
- 2027/3予想ベースではPER 32倍程度。OPM 6.5%→8%の道筋が見えれば、さらなる利益成長でPERは消化される
リスク
- AI投資サイクルの変動: データセンター投資は大きな波がある。投資減速局面では光配線・放熱部材の受注が急減する可能性
- フリーCFのマイナス継続: 成長投資は必要だが、資金繰りの悪化は財務リスク。有利子負債3,167億円に対して現金705億円と手元流動性は潤沢ではない
- 自動車セグメントの不確実性: 売上の6割を占める電装エレクトロニクスはワイヤーハーネスを含む。EV化の進展や自動車生産の変動に大きく左右される
- 光配線の競争激化: フジクラ、住友電工、海外勢(コーニング等)との競争は激しく、価格下落リスクが常にある
- 純利益の特殊要因の剥落: 2026/3期の純利益は特別利益を含んでおり、基調的な利益水準は営業利益ベースで見る必要がある
まとめ
古河電気工業は、フジクラのように「光配線で一点突破」する銘柄ではない。光ファイバーから電力ケーブル、放熱・冷却部材、半導体関連材料まで、AIデータセンターに必要な部材を幅広く持つ「総合部材メーカー」だ。
その幅広さがゆえにOPMはフジクラに遠く及ばないが、変化の方向は明確だ。OPMは2年で1%台から5%近くまで改善し、会社予想では6.5%を目指す。利益率の改善がさらに加速し8%に到達すれば、「フジクラの次」として本格的に評価される局面が来る。
一方で、フリーCFのマイナス、自動車セグメントへの依存度の高さ、PBR 7倍という高い水準は注意点として残る。「利益率改善の継続」が投資のカギであり、逆に言えばOPM改善が止まれば株価の調整余地は大きい。
光・電力・冷却の3本柱でAIデータセンターに食い込めるかどうか。次の四半期決算で、各セグメントの利益率推移を注意深く確認していきたい。
関連する企業分析ログ
- フジクラ(5803)企業分析ログ — 光配線の直接競合。高収益の光配線本命として比較対象になる
- SWCC(5805)企業分析ログ — 同じ電線業界で電力インフラ寄りのポジション
参考文献
- 古河電工 公式 Company Profile:https://www.furukawaelectric.com/en/company/outline.html
- 古河電工 公式 データセンターソリューション:https://www.furukawaelectric.com/en/solution/datacenter/
- 古河電工 IR資料室:https://www.furukawaelectric.com/ir/library/
- 古河電工 ビジョン2030実現に向けた経営方針:https://www.furukawaelectric.com/ir/library/
- IRBANK 古河電気工業 決算まとめ:https://irbank.net/E01332/results
- IRBANK 古河電気工業 セグメント:https://irbank.net/E01332/segment
- IRBANK 古河電気工業 四半期進捗:https://irbank.net/E01332/quarter
- IRBANK フジクラ 決算まとめ:https://irbank.net/E01334/results
- IRBANK 住友電気工業 決算まとめ:https://irbank.net/E01333/results
- IRBANK SWCC 決算まとめ:https://irbank.net/E01336/results
- 株探 古河電気工業 大株主:https://kabutan.jp/stock/holder?code=5801
免責事項
本記事は企業の公開情報をもとに個人が調査・整理したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。掲載情報の正確性には注意を払っていますが、完全性を保証するものではありません。



コメント